熱海国際交流協会

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09月

~「カスカイス市と熱海」~カスカイス研修生による発表が行われました

 8月25日、今年度の第2回国際理解講座として、起雲閣・音楽サロンにてカスカイス市研修生による発表会があり、参加くださった方が感想文を寄せてくださいました。

 「真摯に学ぶ姿勢が伝わったカスカイス市研修生の発表会」

                                                          生涯学習課社会教育指導員   藤田 理

 8月25日にカスカイス市研修生の発表会に参加した。6人の立場や視点はそれぞれであるがどの発表からも熱海や日本の文化を真摯に学ぶ姿勢が伝わってきた。その中から興味深かったことをいくつか取り上げてみたい。

  一つ目は、青少年部の市職員による若者を支援する市の施策の話である。施策は、個の自立、社会人や職業人としての自立をめざしたものと受け止めた。理念もしっかりしているが、具体的な取り組みがすばらしい。職業訓練や職業情報センターの運営の他、若者のコミュニケーションづくりの場の設置、ボランティア活動の支援など幅広い。さらに、若者の心の相談や住宅問題まで面倒を見ている。その施策からカスカイス市の社会全体で若者の自立を支えていこうという取り組みには学ぶところが大きい。何をだいじにするか、カスカイス市民の哲学すら感じた。

  また、市職員の発表では「生涯学習」にあたる説明はなかったと思うが、わたしは生涯学習課に籍を置くので、「カスカイス市の生涯学習は、若者の社会人・職業人としての自立をめざしたもの」と勝手に概念化してみた。それはともかく、あらためて日本の若者の自立を考えさせられた発表であった。   

 二つ目は、若きシェフの話である。わたしはカスカイス市の若者が日本人や日本の文化をどのようにとらえているか関心があり発表会に参加していた。彼は、それに応えるように日本人の「和」の心を取り上げていた。相手に対する礼や尊敬の念、おもてなしの心や気配りにも触れていた。よく勉強したなと感心するとともにうれしくなった。料理人なので、人の心だけでなく、それぞれの食材の和も意識していたようである。なかなかのセンスである。

 ところで、桃山時代や江戸時代の初めの頃、特に大名たちに珍重されたものに洛中洛外図屏風がある。京の町の人々を描いた屏風である。その絵の中には服装こそ異なるものの、ポルトガル人が町の人たちに混じって描かれている。そこに、外国人も受け入れる日本の国民性や風土を感じるのである。彼の話から、それも和に通じるものではないかと感じた。

  発表の中で紹介した創作スープは和食のだしや旨みを生かしたものである。また、そのスープは食材としてトマトを使用していた。発表の中ではトマトに含まれる和食の旨みについて触れていなかった。そこで、発表後、彼に直接そのことを尋ねてみると、トマトを和食の旨みとして意図的に使っているという説明であった。よく分かっていたのである。後日、彼と会う機会があり、発表で紹介したスープに麺(パスタ)を入れれば絶対においしいラーメンができるよ、と話しかけた。すると、もうやっているという答えが返ってきた。彼には、ぜひ日本の食文化を生かしたり、広めたりしてほしいものである。

  二つの発表を取り上げたが、その他の発表もとても興味あるものでありおもしろいものであった。熱海紹介のビデオ映像や熱海の名物などを取り上げた扇子などもそうであり、すべてが心の底からわき出たものなのだと感じた。研修生は熱海での体験を通して新たな課題が生まれたことであろう。今後も課題意識を持ち続けてほしいものである。

  最後に、発表会に参加して、研修生の人間的な魅力とともに、市民レベルの国際交流の大切さを強く感じた。研修交流を支えてくださったみなさんご苦労様でした。